友達とルノアール行ったら、新人研修中みたいな人が先輩と一緒に水を運んできた。「アイスコーヒーください」って言ったら新人がピッピピッピやって、そのうちピー!なんて明らかにダメな音が出て、先輩が「あ、ここ押す」「あっはい」なんつって私たちの注文を教育に転用したあと二人で帰っていった。しばらくしたら新人だけやってきて「アイスコーヒーでございます」と言うんだけど、それを言うタイミングがグラスマットを敷くときジャストだったから、もし僕が何でも吸収する3歳児だったら、このマットのことをアイスコーヒーと認識するな、と思った。そのあと、未知のものが”アイスコーヒー”の上に置かれる。店員からの説明はない。これは奇妙だ。この名前は何だろう。3歳児の好奇心なんて果てしないですから「おかあさん、アイスコーヒーの上はなに?」なんて聞くんですよ。そうすると「うーん、アイスコーヒーの上……あ、水出しアイスコーヒーかしらね、ちょっと高いし」なんて言う。適当なことを言うんですよ、親は。
親の適当さはどうでもいいんだけど、その、言葉を発するタイミングを間違えるとちょっとおかしなことになる現象、というのがその日は立て続けにあって、これもコーヒー屋の話だ、どんだけコーヒー飲むんだって話ですけど同日です。ドトールから出たら店員さんが追いかけてきて「これ、お忘れではないですか?」と両手で差し出した。それが本当に何なのか分からない部品で。パイプが2つくっついてる感じのおもしろ手乗りパーツで。
もうその時点で絶対に僕のものではないのですぐに「違います」と言えばよかったんだけど、本当に何なのか分からないモノって面白いじゃないですか、感心して思わす回り込んでいろんな角度から「ん~?」と見入ってしまって、初動としての「違います」を言うタイミングを逸してしまった。その間ずっと店員さんはパーツを両手に載せてくれていた。しばらくじいっと見たあと、結局なんなのかさっぱり分からなかったのと、ずっと持たせてしまったことに気づいたのでちょっと早口で「アッ違います」と言ったんだけど、この遅れたタイミングでしかも早口の「アッ違います」を言う人には、このパーツに無関係ではない可能性が出てくる。例えば、この部品を使うサークルに所属しているのでもちろん同じものを持っているが自分の刻印がないので「アッ自分のではないです」と判断した可能性がある。もっと酷いのは、ネコババしようとしたが詳しい鑑定の結果レア度が低いことが分かったので「アッこれは要らないです」と判断した可能性がある。
だからかもしれない。店員さんに「これ、何なんですか?」と聞かれた。さも、僕が知っていて当然のように。「知らないです」と答えた。